大手企業研究職からベンチャーCTOへ ーAIによる最適解の社会実装へ向けて
HEROZ株式会社で、取締役CTOと開発部部長を兼任する井口圭一さん。2013年に入社されて以降、同社の技術向上や顧客業界の拡大など、サービスの実現可能範囲を広げ続けて来られました。大手IT企業の研究職から今のキャリアに至った経緯、そして今「心からやりたいことができている」と語る仕事のやり甲斐について詳しくお話を伺いました。
得意なプログラミングを活かし、大手IT企業の中央研究所へ
学生時代は、どんなご経験をされていらっしゃいましたか?
高校生の頃、東工大が主催するスーパーコンピューティングコンテストの第一回目に出場しました。昔から理数は得意な分野で、プログラミングも自分なりにしていたのですが、この時出会った周りの出場者にはすごく刺激を受けました。大学では情報工学を専攻し、AIの研究室に入りました。コンピューターの創発分野に興味を持ったからです。当時、AIというキーワードは下火。”自動化”という形で利用されるシステムはあったものの、AIという呼び方はされない時代でした。
社会人になってからは、いかがでしょうか。
大手IT企業に研究職として入社し、中央研究所でXML通信の分野を担当しました。しばらく研究を続けていましたが、このままここにいると、自分の将来像がある程度想定できるように感じてしまい、新しいチャレンジに踏み出そうと決意。2010年当時に急成長していた、ソーシャルゲームの開発を始めました。この会社では開発部長などを担当し、ゲームの開発がひと段落したところで、2012年に当社HEROZに合流しています。入社した頃から今まで役割は大きく変わっていないのですが、開発分部長として開発全般を見る立場を務め、2020年からはCTOと兼ねることとなりました。
HEROZ株式会社へ入社されてから、やりたいことはできていますか?
2012年当時、まだ現在ほどAIの重要性が謳われていなかった頃から「AIに注力していきたい」という思いがあり、自分自身がずっとやりたいと目指していた所でした。ですので、今のキャリアで思いが叶い、納得感を持って取り組めています。
試行錯誤を重ねてAIの力を広げ続けるーーHEROZ でCTOが果たす役割とは
現在、どのようなビジネスをされていますか?
初めは「将棋ウォーズ」など、BtoCのゲームでAIを提供していました。2016年頃からはBtoBのビジネスを始め、金融や建設などの分野でもAIを利用していただくようになってきました。
井口さんは、会社でどのような役目を担っていらっしゃいますか?
HEROZでは実ビジネスは全て開発部で行っています。自分はその開発部全般を見る開発部長を務めています。技術をどこに注力してくのか、どういったプロジェクトに注力していくのかといった方向性を定めることが主な担当です。かなり動向が激しい業界ですので長期的には読み切り辛い部分もあり、常に2~3年後を見据えながら方向を見極めています。
採用面では、どのようなことを重要視されていますか?
二方向で見ていて、まず「スキル」について。これはAIを扱う技術を指しますが、当社ではここは重視しています。当社には技術的にかなり難易度の高いタスクを求められることが多く、それにこたえられる技術者を集めています。それに、AIをサービスとして提供するために、周辺技術を担保するエンジニアの方も必要になっています。またもう一点、マインド面では、AIがビジネスに適応できた際に、お客様に使っていただくことに喜びを感じる方が望ましいです。
井口さんが考える「AI技術」について、少しお教えください。AIは、実際には何をしてくれるもので、どのように作られていくのでしょうか?
私の場合、コンピューターが何かしらの形で自動化してくれることをAIと呼んでいます。「人間が何を判断するのか」の判断の内容を紐解いて、ルール化するなりディープラーニングするなりの処理をすることを指します。
AIを作るためには、まず技術者それぞれが仮説ベースで、”出来の悪い試作品”を一旦作ってみます。ここでは精度は求めていないです。その中で、「この辺が違う」など理想との差分を見つけて、ブラッシュアップをします。この目標とのギャップ埋めを重ねながら、照らし合わせる基準を指標化し、精度を上げながら完成させていきます。
例えば、将棋AIはどのように出来上がったのでしょうか?
はじめは、将棋が強い人が前談のようなフローをもとに作り上げました。今では機械学習ができるので、必ずしも設計者が強い必要はなく、それよりもコンピューターにいかに学ばせるかが鍵になってきています。ちなみに、会社のメンバーは、将棋の強い人がかなりいて、将棋ウォーズを使って社内大会が行われたりしています。特に将棋ウォーズの担当者などはとても強く、私が対戦させてもらうときはハンディキャップとして棋神を5~6回呼ぶ権利をつけてもらっています。なお、採用面に将棋のご経験は関係ありませんのでご安心ください。
より難しい課題を、高度なAI技術を用いて解決へ
井口さんにとっての仕事のやりがいと、この先のビジョンを教えて下さい。
仕事のやりがいは、AIの技術が適応されて、課題がちゃんと解決されていく場面を目の当たりにした時でしょうか。AIプロジェクトの開始時には、現実的な技術で解決できるもの、かつ、ビジネスとして効果のあるものをプロジェクトにしていきます。
これまで当社の強みとしてきたゲームに関するサービスだけではなく、様々な業界の方々と仕事をさせていただく機会が増えました。今後は、こうした各業界の知見を活かして、プロダクトに反映し、AIを幅広く使っていけるようにしたいです。現在の注力している業界は、ゲーム・エンタメ、金融、建設などで、社員約50名が携わっています。
井口さんにとって、イノベーションとは?
既存の枠組みを壊して、新しく変化を生み出すことでしょうか。革新的な変化を生み出せるよう、自分自身も日々チャレンジを続けています。