表現をもっと自由にープラットフォームで「個性が爆発する」時代へ
STORES株式会社で「VP of Business Development」を務める伊藤圭太さん。学生時代は水上スキーで日本代表キャプテン、新卒入社の三菱商事ではアパレル・小売業界のキャリアを築き、出向先である大手ブランドの大幅な売上増大やヨーロッパ部門での副社長歴任など、グローバルに活躍されます。しかしその裏で、経済格差の現実を目の当たりにする出来事と、「地獄のようだった」と語る日々が。その後何故、大手企業からSTORES株式会社への転職を決めたのかーー伊藤さんがご自身の中で大事にし続けている信条をキーに、その秘密に迫ります。
華々しいキャリアと壮絶な経験ー”地球上で”最良の選択肢とは
これまでどのようなご経験をされてきたのでしょうか。
学生時代は水上スキーの競技に励み、日本一を目指して体育会の激しい環境で追い込みながら、圧倒的な力をつけようと毎日猛練習をしていました。私の信条である「”地球上で”最良の選択肢を選ぶ」そんな思いを胸に、大学四年の頃に休学して留学。1000ドルを握りしめて、アメリカの世界チャンピオンの家に突撃し、水上スキーの技術を学びました。最終的には、全日本選手権でチームは準優勝し、個人で日本代表キャプテンになって世界選手権に出場することが出来ました。そんなバックグラウンドが表すように、これだ!というものへ突っ走るがむしゃらさが就職活動時期でも武器でした。
2005年に三菱商事へ入社し、希望したB to Cビジネスの中で、繊維・アパレル部門へ配属されます。そこでは、OEM(Original Equipment Manufacturing)で大手アパレルメーカーに商品を納める仕事を担当していました。当時、中国の高度経済成長が目覚しく、国が発展するリアルな実態を目の当たりにできました。その一つが「軽工業が徐々に重工業へ移り変わる」様子。
軽工業は、まさに自身が身を置くアパレル業界でも密な関係にありますが、そんな軽工業出身者が国を支え、やがては国会議員にすらなってしまうほどの大きな成長を見ていたのです。ある時、中国で稼いだ外貨で、ビジネス開拓として東南アジアへ進出する場面に同行。その現場で、現地の方々の賃金に信じられないほどの格差があることを知りました。発展とはどういうものなのか。ダイナミズムの一方で、その影にある資本主義の裏と不平等さを感じました。
この出来事は、自分自身の生き方をも見つめ直すきっかけに。2011年、ある大手ブランドへ出向しますが、小売業のサプライチェーンにおいて、「作る」という立場から「売る」という立場へと移行しました。このブランド側に立って初めてのミッションは、なんと「500億の売上を、3年間で倍にする」というものでした。0からのスタートだと踏み切った矢先の衝撃的な通達でしたが、結果的には出向先のみなさんと力を合わせて奮闘し、約4年でなんとか達成します。
順調なキャリアにお見受けしますが...。
いえ、ここからが地獄のような日々でした。同社の中で唯一赤字であったヨーロッパへ副社長として赴任することに。当時32才の自分に、11カ国、77店舗。現場の離職率は100%を超えていました。そんな中で、ダウンサイジングをしながら人員を整理するという、人生で一番辛い経験をします。最終的には、3年半で黒字化が見えたタイミングで日本へ戻りました。
そのような激動の中、STORES株式会社へ転職するまでの道のりはどのようなものだったのですか?
帰国後、IT関連業の希望を出して本社へ移り、2017年から決済事業会社へ経営サポートをしながら、ベンチャー企業への事業投資をしていました。そんな中、STORES株式会社代表の佐藤裕介と出会い、STORESのビジョンとサービスに可能性を感じた私は出資を決めます。自らも出向し、全リソースをかけてSTORESの仕事を受け持っていました。
事業に携わる中で、「個人をエンパワーメントする」という企業理念に非常に共感していました。自分自身、「個性が爆発する時代を作りたい」ということをよく申し上げているのですが、個人の思想が徐々に発信しやすくなっていく現代で、これまでのモデルをインストールするのではなく楽しみやこだわり、情熱への表現がもっと自由にできるようになってほしい、そんな思いがあり、実現機会として最適だと考えたからです。
また「自身が貢献できること」にもSTORESの事業はフィットしていました。小売業という分野で、糸や生地の調達・生産から販売まで一気通貫してきた自分だからこそ、事業へ存分にナレッジを活かせるのではないか、と。様々な面でシンクロ率の高さを感じたのです。自分自身と真っ向から向き合い、最終的には「社員の皆さんの”人生を背負う”」そんな覚悟で転職を決めました。
プラットフォームサイドから「個人のエンパワーメント」の醸成を目指して
現在、どのようなビジネスをされていますか?
「VP of Business Development」という役職で、事業開発とセールスの分野を管掌しています。事業開発での主な仕事は、STORESが中長期的に成長するための仕組みを作ること。まさに「転ばぬ先の杖」の通り、先々にもしっかりと仕掛けが用意してあることで、大きく前進することができると思っています。既存の事業を伸ばしながら、最前線では盤石に田植えをするようなイメージです。
セールスサイドでは売りを上げる、稲穂で言えば収穫担当だと思っています。「オーナーさん(顧客)の役に立つためにはどうしたら良いのか?」という究極の問いへ、体当たりをするような思いでぶつかっています。プラットフォーマーである私たちの存在価値から定義し、それぞれの意見を大切にしながら繋いでいく、ということを意識してトライする日々です。
伊藤さんは、今どんな未来を描いていますか?
会社のミッションに強く共感するからこそ、個性が爆発できるような時代を作るために本気で動きたい。しかし「個人をエンパワーメントすること」をメインストリームにすることは、現在の社会では非常にハードルが高いことです。チャレンジは突如起こることではないと思いますし、私たちプラットフォーマー側だけで醸成できることでもありません。だからこそ、想いに共感してくれた人を見つけ、個人で活躍している人や自己表現をしている人、彼らのリレーションを活かしながら、未来のためにサービスを広げていきたいと思っています。
これからスタートアップへ入社を検討されている読者の方に、メッセージをお願いします。
ご自身にとって、モチベーションがふつふつと湧いてくるような「湧き水」はありますでしょうか。私自身はこれを「因果」と考えます。原体験や嘘偽りのない真実、そこから湧く強い「想い」が本当にやりたいことと結びつくのだと。芯にある想いが未来を創るのです。私が採用シーンで最も大切にしている点であり、確認していることでもあります。
自分に嘘をついていないか、忖度を優先していないか。自分と向き合い、個人のフィットを突き詰めた時に、必ず最良の環境に出会えると私は信じています。