ユーティリティープレイヤーとして独自のキャリアを目指す、若手プロジェクトメンバーに聞く
株式会社AIメディカルサービスは、CEOであり内視鏡医として第一人者でもある多田智裕氏が「世界の患者を救う~内視鏡AIでがん見逃しゼロへ~」をミッションとし、2017年に創業したスタートアップ企業です。同社が開発するAI製品は、圧倒的な臨床データ質量を搭載されていると、国内外の医療業界で注目を集めています。今回、お話を伺った小島隆宏さんは、入社2年目にして、製品開発の企画から開発プロセスまで、各専門領域の垣根を超えてサポートする、ユーティリティプレイヤーとしてご活躍されている方。小島さんのこれまでの経緯や、医療機器の開発現場で働く思いなどについて、お話を伺いました。
■ドラマの影響を受け、医療系へ。プログラマーとしてキャリアをスタート
ー これまでのご経歴を教えてください。
子どもの頃から自動車が好きだったので、自動車業界への就職に強い大学を選びました。大学と大学院では、材料工学を専攻。自動車に使われるエンジン部品を強化する手法みたいな研究をしていました。当然、その流れで就職も自動車系に進むつもりでしたが、当時、医学部に通っていた妹から、いろいろな話を聞いているうちに、「医療の世界もおもしろそうだな」と考えるように。昔から、家族で医療ドラマをよく見ていたことも影響していたかもしれません。
就職活動では、専攻をダイレクトに活かせる自動車業界を受けながらも、「自分が学んできた工学系の知識を医療の世界で還元しようと思うと、どんなことができるんだろう?」と探し続け、結果的に大手の医療機器メーカーに入社しました。
前職では、人工呼吸器の開発チームに配属され、プログラマーとして仕事をしていました。約4年半、在籍したのですが、ずっとプログラミングしている感じではなかったです。製品の新機能の企画を考えたり、それを自分でプログラミングして、テストしたり。他の製品と連動する機能を担当する時は、他部署の人たちを集めてスケジュール調整や折衝することが多かったですね。
正直、あまり楽しくはなかったのですが、「自分は向いているんだろうな」という手応えはちょっとありました(笑)。なぜなら、いろんな部署の人たちに「協力してください」、「お願いします」と頭を下げて回るのって、みんなけっこうやりたがらないじゃないですか。でも、それを思い切ってやって、味方になってもらえさえすれば、物事がぐんとスムーズに進む。この感覚を掴んでからは、自分の中で作戦立ててやるようにしたんです。すると、上司もそのあたりを評価してくれて、いろんなプロジェクトを丸ごと任せてくれるようになりました。
ー やりがいがある中で、なぜスタートアップへの転職を考えたのですか?
そうですね。製品の機能を1から自分で考えてつくるという仕事は、確かにやりがいがありました。ですが、ある時、「ものをどうやってつくるか」よりも、「どういうものをつくるのか」のほうが、自分は楽しいなって思ったんですよね。「こういうものがあったら、(医療従事者である)お客様が、すごいラクになるんだろうな」とか、「こういうことができたら患者さんにとってもっといいことだと思うんだけど」といったディスカッションから、製品企画を自ら書き起こしていくという仕事がすごくおもしろくて・・・。それをかなり大きな裁量を持ってやれるフィールドでスキルを身につけたいと思い始めたんです。
けれども、大手は組織もかなり大きいので、縦割り意識も強いから、企画・マーケティング・製品開発など、担当領域も明確。私がやりたい各領域の「間のポジション」はもちろんありませんし、一人の社員が大きな裁量を持って進めていくのは難しそうだなと感じ、スタートアップに転職することを決めました。
ー 数あるスタートアップの中から、AIメディカルサービスを選んだ理由は?
エージェントに情報を集めてもらい、選びに選んでようやく1社目を受けに行った会社が、AIメディカルサービスでした。自分のやりたいことをきっちりやれる土壌があるところじゃないと、転職しようっていうハードルを自分の中で超えられない感じだったので、かなり慎重でしたよ。受けに行きたいと思った理由は「すごいことをしている会社があるな」って思ったからです(笑)。なぜって、内視鏡医療は、日本が世界で一番進んでいると言われている領域なんです。そこに医療業界では広く普及していないAIをつくって通用すれば、世界最先端っていうことじゃないですか。
それに、前職でやっていた人工呼吸器の開発は、日本のメーカーがほとんどなくて、海外のメーカーのものを日本が輸入しているという立場だったので真逆ですしね。なので、日本と海外との関係が真逆のフィールドで仕事ができれば、もっと可能性が広がるんじゃないかという期待も持てました。内視鏡医であるCEOの多田が、日々膨大な内視鏡の画像を短時間で読み込むという重労働をなんとかしたいという思いにも共感。自分自身、けっこう面倒くさがりなので、AIを使って時間短縮できたら、もう少し患者さんと向き合う時間が増えるし、ドクターをサポートするツールだなと心から思いました。
それから、製品の企画を選任でやれるという仕事内容も魅力でした。そもそも「医療機器の製品企画」という求人がほとんどないんですよね。加えて、私の場合は「ちょっとかたわらにやっていました」レベルで、製品企画のスキルも経験もこれからというチャレンジャーサイド。これはかなりハードルが高いかなと思いながら面接に臨んだのを覚えています。ですが、実際のオファーは、前職で経験したプロジェクトマネジメント的な業務をやりつつの製品企画という形でしたので、入社に迷いはしなかったですね。
■新規製品の企画に「どっぷり浸かっている」毎日が楽しい。
ーAIメディカルサービスでの現在のお仕事は?
現在は、新規製品の企画を担当しています。2022年3月に入社しましたが、念願だった新規製品の企画をメインに、どっぷり浸かることができる状況になったのは、今年に入ってからですね。面接では、「3ヶ月くらいしたら、次の製品企画を始めるから」と言われていたのですが、進行中だったプロジェクトが仕切り直しになってしまい、結局1年近く、ドキュメントの書き直しやプロジェクトの交通整理、AIの性能評価などのサポートに入っていました。いつ、製品開発に携われるんだろうと思いながらも、自分のスキルがいい具合に発揮できているなという手応えも感じることができました。そしてなにより、想像以上に業務の守備範囲が広くなったというか、裁量がかなり大きく与えられるようになったのが良かったなと思っています。
ーこれから目指したいことは?
私自身、けっこういろんなことに首を突っ込みたいタイプなんだなと自覚しています。AIメディカルサービスに転職してからは、縦割り的な組織の間で悩むこともなくなったので、気持ちがラクになりましたね。各領域のプロフェッショナルのサポートと言いますか、ちょっと手が足りない時に、サポートできる「ユーティリティプレイヤー」を目指したいと考え、動いています。具体的には、製品の企画だけでなく、それに必要なマーケット調査も自分で積極的にやり始めているところですし、医療機器は国に申請を出して許可されないと売れないので、その申請するプロセスも勉強して、製品開発の頭からお尻までちゃんとわかるような人材になりたいです。そのうえで、将来的には、新規事業の開発みたいなものもやってみたいですね。
■やりたいことを好きなようにやって社会貢献できるのが魅力
ー株式会社AIメディカルサービスに向いている人はどんなタイプ?
そうですね。私自身もそうですが、自分で試行錯誤しながら、スキルとか経験を積めることを魅力に感じる人が向いているんじゃないですかね。私の場合は、上司が「まずはある程度、自分が思うようにやってみよう」というスタンスの人なので、自由にトライさせてもらっています。また、自分は医者にはなれない。けれども、間接的ではあっても、技術的なところで、ドクターと患者さんに影響を与えるポテンシャルはあるなと思いますし、自分たちがつくった製品をドクターに使ってもらうことで、世界中の患者さんのがんの早期発見に貢献できると思うと、すごいやりがいを感じますね。自由度が良くも悪くも高い会社なので、自分が本当にやりたいことと、会社の方針がマッチすれば、大きく成長できる環境だなと思います。
ー他業種のエンジニアでも、転職可能ですか?
可能だと思います。ただ、違う業界のエンジニアがカルチャーショックを受けるのが、おそらく製品完成から上市までにかかる期間が非常に長いところ。自分たちがつくったものが、民生品だとすぐ市場で売られるイメージですが、医療機器の場合、国に申請を出し、許可が降りてからでないと上市できないんです。これが1年ぐらいかかるので、エンジニアとしてはショッキングかもしれませんね。また、開発のプロセスにおいても、医療業界はお堅いルールが定められているので、ドキュメント作成も煩雑。そのあたりのことを受け入れられるのであれば、問題ないと思いますよ。