リテールメディア支援のトップランナーの代表取締役が、仕事やメンバーに対する想いを語る。
株式会社フェズは、2015年に創業した小売業界のDXを推進するスタートアップ企業。「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる」という明確なミッションのもと、国内最大規模のリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」をベースにさまざまな ソリューションを開発・提供しています。 2023年夏、リテール業界のグローバルメディア「Retail Tech Insights」が主催する『Top 10 Retail Marketing Solutions Providers in APAC 2023』にも選出され、国内外の注目を集めています。
現場目線を持った小売業界のDX化支援と、フェズで働くメンバーの成長を両輪とし、日々チャレンジし続ける代表取締役の伊丹順平氏にお話を伺いました。
■甲子園出場とスタートアップ起業には、通じるところがあった!
ー どんな学生時代を過ごされていましたか?
地元の岡山で、高校までずっと野球をやっていまして、実は甲子園に出場したこともあります。県立の普通科高校でしたから、練習時間が非常に限られていまして、体育会系的な根性だけでは限界が。
そこでものすごく練習方法を工夫したり、チームが一致団結してひとつの目標に向かってやり抜いた訳ですが、それってスタートアップに似ているところがあるんです。野球でも、フェズでも、みんなで一丸となって目標を追いかけ、達成する時に味わえる爽快感みたいなものを体感することができています。
高校卒業後は、東京理科大に進学。これまでの体育会系モードとは一転して、理系的思考の人たちと切磋琢磨する日々を過ごしたことで、人間性の幅みたいなところがぐんと広がり、振り返るとすごく良かったなぁと思っています。
ー フェズを起業するまでのキャリアについて、お聞かせください。
理系の学生しかいない大学でしたが、学びが進むにつれ、理系職に向いていないことがわかったので、大学院には進まず、就職しようと決めました。ただ、当時は「将来、社会で役に立ちたい」という思いはあるものの、具体的にこれといってやりたいものがない。悶々とする中、「ここなら、けっこう大きなことができそうなところだ」と感じたP&Gに入社を決めました。
P&Gでは、メーカーの営業という立場で、小売の売場の方々やバイヤーさんたちと一緒に仕事をさせてもらう中、「自分たちの商品を使って、どうやってお店の売上を上げられるか」だけを、必死に考えていましたね。100%どころか120%で、目の前の仕事に向き合い、やりきったことで、「消費の本質は、小売の売場と意思決定にある」ことに気づくことができました。
そして、3年半ほど経ち、メーカーの営業としてこれからも自分が成長し続けていくことを、すごく魅力的だなと思う一方、2012年当時、デジタル化やグローバル化の機運が高まり、僕が目の前で見ているリテール業界の課題というのは、今後IT化が進むことで解決されていく可能性があるんじゃないかといった期待もあり、思い切って、ご縁をいただいたGoogleに転職。新規顧客開発本部で、リテール業界や消費財メーカーの営業担当として、広告のデジタル化を推進する業務に約3年半、携わりました。
つまり、P&Gで小売という業界を知り、Googleでは小売業界が持つ課題を特定するためのデータマネジメントの手法と解決方法のマーケティングを学んだ、という感じですね。これらの原体験から生まれたリテールテックのアイデアを、新しいビジネスモデルとして構築したいと思い、起業を決意しました。
■必ず世の中の役に立つ。ただ、市場が追いつくまで少し時間がかかった。
ー フェズの起業は順調でしたか?
最初から「絶対に勝てる!」といった自信のもとに始めたビジネスではなかったですね。
小売に日々蓄積されるデータの重要性を理解し、テクノロジーとマーケティングの力で、消費者の行動を正確に捉えるリテールデータプラットフォーム「Urumo*(ウルモ)」の構想は、アイデアの段階からかなり明確で、必ず世の中の役に立つと確信していましたが、それと同時に、カタチにするためには少し時間がかかるだろうといった覚悟もしていました。なぜなら、今でこそ、リテールテック、リテールメディアといったところに市場の注目もありますが、2015年の起業当時は、そもそも市場自体がなかったので、投資家の方々に説明しようもなくて(笑)。そこで、最初の1〜2年は、他の仕事で経営資金を稼ぎながら、市場が追いつくまで、テストを繰り返しながら開発を進めていました。
ですから、なんとかやっていけそうだと思えるようになったのは、だいたい3年目ぐらいかな。実は3年目でやっと資金調達ができたんです。その後、起業5年目にあたる2020年に、Urumo*をようやくローンチすることができました。
*「Urumo(ウルモ)」:複数の大手リテール事業者とパートナーシップを組み、お預かりした約1億ID-POSデータと連携し、購買データや店頭データ、バイヤー施策データ、販促データなどを管理・分析する、国内最大級のリテールデータプラットフォーム。
ー フェズの現状と今後のビジョンについて、お話しいただけますか?
はい。フェズは「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる」というミッションのもと、リテールメディアと小売の業務効率化という2つの事業で、顧客であるリテール事業者のみなさまのビジネスをアップデートしていきたいと思っております。
そのなかで、まず我々は、先に立ち上げたリテールメディア事業に当面は注力し、マーケットをしっかり捉えられるだけのデータボリュームをしっかりおさえていくことで、小売事業者のみなさんを支援していきたいと思っています。その後、蓄積したデータをマネジメントする技術を開発・提供することで、商品を提供する小売とメーカー、2社だけではできないリテールメディアを通じた企業成長を実現できる、というふうに考えています。
■ミッションを実現させるのは「人」。だから、包み隠さず明確に伝えたい。
ー フェズの採用募集ページはかなり詳細ですね?
はい。フェズの事業モデルと事業に向かっての方向性に関しては、起業当初から、揺るぎない自信があるんですよ。ですが、それを実現させる「人」に関しては、僕自身の力ではどうにもできない、と思っています。それだけに、やっぱりいいときもあれば、悪いときもあるんですよね。
ですから、フェズでは、「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる」というフェズのミッションと「リテール成長のために進化し続ける」というビジョンを実現させるために、組織として大切にすべき行動指針(VALUE)や価値観(CO-VALUE)を定めています。
さらに採用に関しては、具体的な仕事内容や選考フロー、必須スキル、歓迎スキル、求める人物像、人事評価制度など、応募者の方がイメージしやすいよう、包み隠さずお伝えしていますね。
ー フェズのメンバーの特徴や、メンバーに求めることは何ですか?
たぶん、フェズのメンバーは素直で実直な人が多いと思いますね。これは僕自身が素直で実直な人が好きだからかもしれないです(笑)。
フェズでは、組織として大切にしている価値観(CO-VALUE)を全メンバーに求めています。それは、「リスペクトを行動で示す」「弱みを見せ合う」「フィードバックを贈り合う」の3つです。
前提として、メンバーはお互い人間同士。立場とか関係なくお互い人間だから、リスペクトは行動で示し合いましょうと。リスペクトはできていても、それが行動に表れていないことで誤解が生じるケースがよくあるからなんです。
なぜ、この話をするかというと、ベンチャーって、やっぱり失敗が多いんですよ。これは他の会社も一緒だと思いますが、バカみたいに失敗をいっぱいしているんですね。だから、失敗を恐れては何も始まらないので、自分が弱い部分っていうところは、さらけ出しながら前に進んでいかないとね。
最近、アンラーニングとかリスキリングっていう言葉とかも流行ってきていると思うんですけど、根底は、まず自分の弱い部分の認知と自己認識しないと何も始まらなかったりする。実はね、メンバーが互いに弱みを見せ合うっていうことは、社会人の基礎としてかなり重要なことじゃないかなと思うんです。
とはいえ、弱みを見せ合うだけだったら、ただの泣き言集団になっちゃうのでね(笑)。フィードバックをお互い贈り合う中で、弱みを強みに変えていったりだとか、補い合う関係になっていく。そんなオープンな関係がフェズの特徴になっているのかなと思います。
■「フェズ出身」の人たちがどんどん活躍する世の中に。
ー最後に、フェズへの転職を考えている人たちに、メッセージをお願いします。
これから転職がもっと加速する世の中になると、優秀な人がフェズに入って活躍した後、卒業されていくっていう流れは自然だと思っています。でも、それに抗うんじゃなくて、むしろその波に乗りたい。僕はよくメンバーたちに「フェズを辞める時にキャリアアップしていないと、辞めちゃダメだよ」って冗談で言うぐらいです。
要は、フェズを辞めたメンバーが、その後、世の中でどんどん活躍し、また新たな人材をフェズのメンバーとして迎え入れる。そんなサイクルが回っていくようになったらうれしいなと思います。
これはもう紛れもなく本音で、今も、フェズのメンバーの成功っていうところが実感できるときに、ものすごく喜びを感じるんです。たとえば、Urumoのプロトタイプは僕ではなく、他のメンバーがつくったことや、若手メンバーが出雲オフィスを立ち上げたこと、こうしたほうがいいと率直に意見を言ってくれることなどです。
さらに、欲を言うなれば、「フェズ出身者です」と堂々と言ってくれる人が増えたら、嬉しいですね。
フェズのミッションに共感し、チャレンジしながら成長することを望まれている方、ぜひお待ちしています。